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最高裁判所第一小法廷 昭和35年(オ)201号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士古屋福丘の上告理由第一点について。

本件土地の所有権が浅尾長次の死亡に因りその共同相続人である被上告人浅尾正三、山田重次、被上告人浅尾豊和の被相続人である浅尾英世及び訴外近藤直七、近藤豊次、入江新次郎に移転し、右六名の所有に帰したところ、上告人は右近藤直七、近藤豊次、入江新次郎の持分を買い受けたこと、これより先き前示浅尾長次から上告人に対し、同人が本件土地の上に本件建物を所有していた関係から本件建物の収去及び本件土地明渡請求の訴が提起されており、右訴訟において浅尾長次の勝訴の判決が言い渡され右判決は確定したこと、右判決が本件において上告人から執行の排除を求められている債務名義であることは、原判決の確定した事実である。

さすれば上告人は前示浅尾正三、山田重次、浅尾英世とともに本件土地の共有権者となると同時に右債務名義上の権利すなわち前示建物収去並びに土地明渡の請求権という不可分債権の準共有者たる関係に立つに至つたものと認めるを相当とすべく、従つて、債権債務が全く同一人格者に帰しいわゆる混同を生じた場合とは異り、前示浅尾正三、山田重次、浅尾英世は民法四二九条の法意に従い上告人に対し本件債務名義上の権利を行使し得べき筋合である。そしてこの場合本件土地について、また、本件建物について、上告人の所論買取請求権行使の結果それぞれ共有関係が発生したからといつて、それだけで右関係に消長あるべきわけのものではない。原判決は結局叙上と同一轍の判断に出でたものであつて、その判断の過程に所論のかきんあるを認め難い。所論はひつきよう叙上と相容れない独自の見解以外のものではなく、採るを得ない。

同第二点について。

原判決認定のような事実関係の下で上告人の権利濫用の主張を排斥した原判決の判断は正当である。所論は原判決認定以外の事実関係を想定して権利濫用を云為し、原判決に所論のかきんあるが如く攻撃するものであつて、上告適法の理由とするを得ない。故に所論も採用できない。

同第三点について。

所論はひつきようするに、原審の専権に属する証拠の自由な選択並びにその評価に対する非難に帰するものであつて、これまた上告適法の理由とするを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 高木常七)

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